『17才の帝国』は、そのタイトルだけでなく、内容もまた想像力を刺激する挑発的な作品だった。
政治AIが、十七歳の高校生を総理大臣に選ぶ。舞台となるのは“202X年の実験都市”だから、近未来どころでない。GDPも大きく落ち込み、失業者も増大した日没国家だ。
政府は目玉政策として、AIによる実験都市、UA(ウーア)を地方の青波市に創設する。AIソロンは十七歳の高校生、真木亜蘭(神尾楓珠)を総理に任命した。他の三人の閣僚も二十五歳以下の若者だ。
神尾が演じる真木の容貌に圧倒的な迫力がある。最近の若者には稀な、潔癖さと優しさを併せもつ神尾の“昏い”表情が、私たちをまず魅了した。
実験都市UAには三本の無線塔が聳えている。美しい海と街を見下ろす無線塔が、三基のスパコンとして光を放つ姿の映像美が、近未来SFを象徴している。
真木がUAの総理として最初に提言したのは、市議会の廃止だった。旧青波市の市長である保坂(田中泯)を始め、既得権益を持つ守旧派は猛反対。
AIソロンは即座に全市民にVRグラスを通して、総理の提案への賛否、総理の支持率、幸福度などを可視化して見せる。若干の変動はあるが、真木の支持率は確実に上昇してゆく。
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source : 週刊文春 2022年6月16日号