『ラヴィット!』が好調らしい。「事件ネタを扱わない生活情報バラエティ」で、TBSは以前も『はなまるマーケット』でこの路線をやって成功していて、どっちも「事件ネタを扱わないからこその面白さ」で評価されている。

 これで思うのは「事件事故ネタのワイドショーってのは強いんだな」ってことだ。なんでだよ、日常ほのぼのお笑い系の『ラヴィット!』が人気だって言ったその舌の根の乾かぬうちに何言ってんだとお思いでしょうが、『はなまる』はあんなに人気があったのにいつの間にか終わって気づいたら「TBSの朝は事件事故芸能ネタのワイドショー」になっていた。『ラヴィット!』は今のところ終わる気配はないが、このまま「朝はとにかく事件やらないほのぼの枠」をTBSが堅持すると思うか。今の『ラヴィット!』はTBSにとっての「2度目の禁煙に成功しました!」みたいなもんではないのか。最初の禁煙はどうした。いや、2度目の禁煙は成功するかもしれないが。

 で、『ラヴィット!』の成功を頭に置いて、同局の午後ワイド『ゴゴスマ』を見ていると味わい深い。

 ずっとこの時間帯は『ミヤネ屋』見てたんですが、例の「阿武町4630万円誤送金問題」をきっかけにこっちを見るようになってしまった。

『ミヤネ屋』は良くも悪くも「宮根の番組!」ですが、『ゴゴスマ』の石井亮次もけっこう印象的な司会者だということがわかった。けっこうアクがある。宮根誠司がいかにもアクっぽいアクなのに対して石井さんは澄んだアク。澄んだアクってのもへんな言い草だがそうとしか言いようがない。

石井亮次

 阿武町事件のつっつきまわし方にしても、『ミヤネ屋』と『ゴゴスマ』、両方とも「まだやるのかよ!」というぐらいしつこくこの事件をやっていたが(原因がしょぼく、人も死んでないし、捕まったお兄さんが突っ込みどころ満載の装いだったから、これはいくらでもつっついていいというゴーサインが、局にも視聴者にも出ていたとみる)宮根誠司が「あらヤダこれいったい何やってんの、もーイヤねえ」的ないやらしさを見せるのに対し、石井さんは「どうしましたどうしました、どうしたらいいですかワタシ!」という、宮根さんとはまた別のタイプの、物見高い奥様的食いつき方。そしてシツコイ。

 いやね、この食いつき方を見てると、朝ワイドで事件ネタやらないぶんも私が頑張る! というような静かな熱意を感じるのですよ。この人が澄んだアクをたたえつつ下世話なネタに上品に食いついて、東国原英夫元知事や山口真由弁護士がしたり顔で火に油を注ぐ。やはりテレビ局はワイドショーで事件ネタやりたくてしょうがないんだなあと思う。

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source : 週刊文春 2022年6月23日号