元文春記者が実体験をもとに調べ、聞き、描く介護の謎。第2回のテーマはケアマネの選び方。「介護の司令塔」という重要な存在にもかかわらず、誰も選び方を教えてくれず、そもそも選ぶための情報が極端に少ないのだ。
★第1回を読む
「人の世話にはなりたくない」
以前から常々そう話していた母親(74)が、自宅の階段から転落したのを機に、介護が必要になったのは昨年のことだ。
それまでは東京の郊外で一緒に暮らす父親(78)が、買い物や炊事、洗濯から入浴の介助まで、母親の世話を行っていた。父親は数年前に自動車の運転免許を返納しており、食材や日用品の調達は、もっぱら宅配してくれるネットスーパーを利用していたという。そんな二人の楽しみといえば、近所の大きな公園を時々散歩することだった。足元がおぼつかない母親の腕を父親がしっかり掴んで、晴れた日の公園を、休憩しながら30分程度かけて歩く。そうした散歩を2日おきにしていた両親も、転落事故の後は、週に1回、外の空気を吸うだけの生活になっていた。
父親が、包括(地域包括支援センター)に今の状況を相談し、母親が「要介護4」に認定されたのは昨年の夏。母親には担当のケアマネ(ケアマネジャー)がつき、いよいよ介護が始まった。
ケアマネとは要介護認定(あるいは要支援認定)を受けた人に対して、どのような介護が必要かを一緒に考えてくれる専門職だ。ケアマネが、両親の状況を把握し、本人や家族の希望を聞きながら、「ケアプラン」と呼ばれる介護計画書を作成する。どのような器具をレンタルするか、どんな施設に通うか、どういう手助けが必要で、どのくらいの期間サービスを受けるかなど、細かくケアプランを立てていく。例えば、福祉用具や工務店などの業者の紹介や手配、介護保険に関する各種申請手続きや、業者間の調整なども行ってくれる。いわば“介護の司令塔”がケアマネだ。このケアマネがいないと、何の介護サービスも始まらない。それゆえ、担当のケアマネ次第で、親の介護の質が大きく変わると言っても過言ではないのだ。
そんな重要な役割を果たすケアマネだが、役所からおすすめされることはない。介護される本人、または家族が自ら探さなければいけない仕組みになっている。
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source : 週刊文春 2022年7月7日号