秋元康は作詞家としては相当デキるし知られざる名曲とかいっぱいある。作詞だけしててくれれば、と思うのに、プロデュースやら番組が多いのが問題なんではないか。とくにドラマ!「秋元康が企画のテレビドラマ」多すぎ!
『吉祥寺ルーザーズ』を以前ここで取り上げてキャバ嬢役の田島芽瑠をほめたが、その時にもう一つ書きたかったのが、「企画・原作の秋元康は一体何を目指してるのか」だった。
「秋元康企画・原作(or原案)」のテレビドラマは山ほどある。『マジすか学園』『豆腐プロレス』『ユーチューバーに娘はやらん!』『警視庁ナシゴレン課』『もしも、イケメンだけの高校があったら』……山ほどあるんだ。今年に入ってだけでも5つもあるぞ。
『吉祥寺ルーザーズ』をわりと熱心に最初から最後まで見て思うのは、「秋元康は金儲けのためにテキトーにドラマに手を出してるのではない」ということだ。これは秋元康の「見果てぬ夢」だ……きっと。
秋元さん演劇すごく好きなんだろうなー。それも小劇団の演劇。「小屋でやる」ような。『吉祥寺ルーザーズ』全体から流れてくる、突拍子のない設定に突拍子のない登場人物、突拍子のない行動、しかしそんなやつの「生きづらさ」みたいなものをチラッと見せ、気がつくとホロリとさせる、がすぐまた突拍子ないことをしつつ大団円……というこの王道展開!
そうかこれは小劇団の演劇か、と思って見ていると、濱田マリのパチンコ狂公務員とか、片桐仁の売れない芸人実演販売員とかがさすがにうまくて泣かす。田中みな実に小劇団芝居は、そらムリがある。見ていてつらかった。本人もつらかったろう。あ、増田貴久はなんか透明な感じで馴染んでて不思議だったけど。それで、最後まで田中みな実とくっつかないというのはよかった。……が、片桐仁と濱田マリがくっついた。
いろいろツラいドラマだったが、とにかくツラかったのが、ドラマ全体に「テレビのバラエティノリがやたら入り込んでくる」感じ。國村隼のシリアスなんだかお笑いなんだかわからない、まさに「バラエティの有名ディレクターがちょちょっとやってみました」みたいな見飽きた使われ方、そのあたりを見てると「秋元康は小劇団演劇やりたくて企画はするけど、あとは局に放りっぱなし」なんじゃないかとしか思えず、だからこんな安っぽいはんぱなことになってるんじゃないか。最後まで責任を持て!
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source : 週刊文春 2022年7月14日号