「消えたい」「苦しい」……。彼女は時に涙を浮かべながら、2時間にわたって記者に思いの丈を語った。日本中のお茶の間を笑顔にする裏で、人知れず苦悩していた上沼恵美子。一体、彼女の身になにが起きていたのか――

「最強のふたり」だった

 もう悲しくて胸がほんとにね……雑巾絞ったみたいになるんです。雑巾なったことないけど、絞られたら、痛いと思うのよ。ここ(胸)がギュイーンなってね。これかなわんなって。

 筆者は自身の犬を亡くした体験をきっかけに3年前からペットロスについて取材してきた。多くの体験者に話を聞いてわかったことは、「おおっぴらにちゃんと悲しむこと」の大切さだ。中には「ペットを亡くしたくらいでこんなに悲しむ自分はおかしいのでは?」と自ら悲しみを押し殺してしまう人もいる。

 

 だがまず自分で自分の悲しみを認めないことには、その悲しみから回復するプロセスはいきなり頓挫することになる。

 

 一方で「公の場」では、いつまでも悲しんではいられない人たちがいる。例えば芸能人がそうだ。お茶の間から期待される役割、求められるキャラクターが明確にある彼らにとって、いかに最愛のペットの死であっても、その悲しみをいつまでも引きずるわけにはいかない。いったい芸能人はどうやってペットロスと向き合っているのか――。

 

 そんなことを考えていたとき、上沼恵美子さん(67)が、12歳の愛犬「ベベ」(♀・フレンチブルドッグ)の死をラジオで告白したことを知った。亡くなったのは4月23日。それから3カ月しか経っていない時期に、一面識もないライターからの取材依頼に上沼さんは「こういう取材は嬉しいんです」と応じてくれた。

フレンチブルドッグのベベ

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source : 週刊文春 2022年8月18日・25日号