僕が小学生だった頃、歴史雑誌といえば『歴史読本』や『歴史と旅』ぐらいしか無かった。しかも分厚い文芸誌のような体裁で、文字ばかりの誌面。とても小学生が読めるような代物ではなかった。それでも好きで拾い読みしていたのだが、たまに歴史のエロネタ記事が載ったりしていて、間違っても学校の読書時間には持参できない困った本だった。

 1980年代、歴史ファンは中高年のサラリーマンや経営者に限られていて、女性や子供を読者対象とするような歴史本はまだ現れていなかったのだ。テレビの歴史番組も、NHKの鈴木健二アナの「歴史への招待」が辛うじて流れていたぐらいだったかと思う。

 それに比べれば、昨今の歴史ブームには隔世の感しかない。書店に行けば、新書やムックなど、様々なレベルの歴史関連本が溢れている。テレビを見ても“お城”や“偉人伝”など、いま放送されている歴史番組はBS、CS含めて、いったい何種類あるだろうか。あの頃、こんなに歴史情報が溢れていたら、どれほど満ち足りた少年時代だっただろう。

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source : 週刊文春 2022年8月18日・25日号