テレビや雑誌で「日本史最大の謎!」というと、本能寺の変の「黒幕」とか、坂本龍馬暗殺の「真犯人」といった話題が、決まって採り上げられる。でも、申し訳ないが、日本史研究者で、そうした問題に取り組んでいるのはごく一部の人だけで、他の圧倒的多数の研究者は、それらを必ずしも「最大の謎」とは考えていないし、もっと違うことを「最大の謎」と考えている。
実際、僕なども、歴史上の有名事件の真相よりも、室町の庶民がいったいどうやって時刻を知ったのか、とか、彼らが朝晩どんな食事を口に運んでいたか、といった当たり前に思える問題のほうが、よっぽど謎だらけで、「本能寺の変」なんかよりも、重要な問題だと思っている。
四国の戦国大名、長宗我部元親(ちょうそかべもとちか)が定めた「長宗我部氏掟書(おきてがき)」第五十六条には、次のような記述がある。
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source : 週刊文春 2022年8月11日号