「有名プロデューサーによる性加害は音楽業界でも起こっています。被害者として声を上げることにしました。すでに警察には被害届を提出しています」
東京2020パラリンピック開会式の楽曲を担当した音楽プロデューサー、Seiho(35)。彼の性加害を告白したのは30代のミュージシャンA子さんだ。
Seihoは三浦大知や観月ありさなど有名アーティストのリミックスを手がける売れっ子音楽プロデューサー。メルセデス・ベンツなどのテレビCM曲も制作している。2019年には新国立競技場完成記念イベントの音楽を担当した後、昨年の東京パラ開会式の音楽チームに参加した。
一方のA子さんも音楽活動をしており、Seihoとは20代の頃から仕事で関わりがあったという。一体、何があったのか。
事の発端は今年5月14日、Seihoの単独公演のアフターパーティだった。A子さんは知人に誘われ、渋谷のDJバーに入店した。
A子さんが振り返る。
「顔見知りのDJ、T氏が酔った様子で近づいてきました。距離が近く、『怖いので動画を回します』と告げてスマホを取り出そうとした瞬間、突然、後ろから両手で私の両胸を鷲掴みにしてきたのです」
A子さんは主催者のSeihoに、たった今受けた性的暴行を訴え出た。
ところが――。
「『胸、触られたん? こうやって?』と、Seihoは右手で私の左胸を触ってきたのです。信じられなかった。『何やってんの!』と、抗議する私にSeihoは『酒でもおごるから』などと言い、ドリンクチケットをひらひらさせて、離れていきました」(A子さん)
翌日、A子さんはDJバーに相談。すると5日後、T氏とSeihoからA子さんのインスタグラムにDMが届いた。T氏は胸を触ったことを認め謝罪したが、Seihoは〈触ってないよ〉〈そんな記憶ない〉などと送ってきたという。
A子さんが怒りを滲ませて語る。
「Seihoは『A子とは8年前に付き合っていた』『恨みを買ったのかな』と嘘をつき、言い逃れしているといいます。そもそも私は彼の連絡先も知らない。このままでは事実がすり替えられてしまうと思い、被害届を出すことにしました」
7月、警視庁渋谷署はA子さんが提出したSeihoとT氏に関する被害届を受理。「迷惑防止条例違反」での捜査が始まった。
「防犯カメラの映像が残っていたから捜査ができるそうです。T氏が私の胸を触っている様子、私がSeihoに抗議している声が記録されていた」(A子さん)
Seihoを直撃した。
――胸を触ったか。
「まったく僕は身に覚えがない」
――触ったら覚えている?
「ハグはしたと思うんですよ。でも胸をそのまま触るということはしてない」
――警察から連絡は?
「時間がある時に来てもらえたらって」
事件後、A子さんは男性と接すると恐怖を覚えるようになってしまったという。A子さんは言う。
「私の周りでもSeihoからセクハラをされ、怖くなってしまった子がいます。同様の被害者はもう出したくない。彼の関係者たちにはこのままでいいのか、今一度、考えて欲しいです」
source : 週刊文春 2022年8月18日・25日号