8月4日、全米女子プロ・バスケットボールのスーパースターでオリンピックの金メダリストでもあるブリットニー・グリナーがロシアで懲役9年の判決を受けた。試合でロシアを訪れていたグリナー選手は今年2月17日に空港で逮捕された。荷物の中の吸引器に大麻樹脂がほんのわずか(1グラム以下)残っていたからだ。その1週間後の2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻したわけで、ロシア政府がアメリカと交渉するための「人質」として、最初からグリナー選手を狙っていたと見られている。
案の定、ロシア政府は「囚人交換」を提案してきた。グリナー選手ともう1人、アメリカのスパイ容疑で服役中のカナダ人ポール・ウィーランの2人を、アメリカの刑務所に収監されているロシア人、ヴィクトル・バウトと交換しようというのだ。
しかし、このヴィクトル・バウト、あまりに大物すぎる。なにしろ、ニコラス・ケイジ主演の映画『ロード・オブ・ウォー』(2005年)のモデルになった「史上最大の武器商人」だ。
バウトは1967年、ソ連生まれといわれるが不明点が多い。民族的にはウクライナ系といわれる。ソ連軍の通訳として、英語、フランス語、ポルトガル語、アラビア語、ペルシャ語を習得した。その語学力が世界を股にかける「死の商人」としての最大の武器になった。
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source : 週刊文春 2022年9月1日号