8月5日、ロサンジェルス市マービスタ地区の住宅地の狭い道路を青いミニクーパーが猛スピードで疾走し、民家に突っ込んだ。車は炎上し、1LDKの小さな家は半壊した。消防士は燃える車から運転していた女優アン・ヘッシュ(53歳)を救出した。

 炎に包まれた彼女は酸欠で脳死した。生前の遺志通り、移植に提供する臓器を取り出してから、生命維持装置を外された。

 1969年生まれのヘッシュは20代終わりの1997年から98年にかけて、ハリウッドで活躍した。『フェイク』(97年)では、マフィアに潜入捜査するジョニー・デップの妻を情感を込めて、ロサンジェルスで火山が爆発するパニック映画『ボルケーノ』(同)ではヒロインの火山学者をバカバカしく、ラブコメ『6デイズ/7ナイツ』(98年)ではハリソン・フォードと無人島に不時着する雑誌編集者を楽しく演じて、彼女は人気女優だった。

 同時に、アン・ヘッシュは革命的な女優でもあった。1997年、ヘッシュはコメディアンのエレン・デジェネレスの恋人として2人でハリウッド映画のプレミアに現れた。それは、本当に勇気ある行動だった。その年、エレン・デジェネレスはテレビでレギュラー番組を持つスターとして初めて番組中で「うん、私はゲイだよ」とカミングアウトした。ちなみにエルトン・ジョンもバリー・マニロウもジョディ・フォスターもまだカミングアウトしていなかった時代だ。

 しかし、その後、ヘッシュはハリウッドから消えた。いったい何があったのか。

初回登録は初月300円で
この続きが読めます。

有料会員になると、
全ての記事が読み放題
コメント機能も使えます

  • 月額プラン

    1カ月更新

    2,200円/月

    初回登録は初月300円

  • 年額プラン

    22,000円一括払い・1年更新

    1,833円/月

週刊文春 電子版 PREMIUMMEMBERSHIP 第1期募集中 詳しくはこちら

※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。

有料会員になると…

スクープを毎日配信!

  • スクープ記事をいち早く読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
  • 解説番組が視聴できる
  • 会員限定ニュースレターが読める
有料会員についてもっと詳しく見る
  • 0

  • 0

  • 1

source : 週刊文春 2022年9月8日号