通販の会社から試供品と贈呈用ボールペンが送られてきた。安物のボールペンだ。どうせすぐに書けなくなる粗悪品に決まっている。そう思って試し書きすると、意外にもスラスラ書ける。完動品は捨てられない。
それが問題の発端だった。食事や作業の場所にしているのは食卓だ。そこにペン立てを置いてあり、すでに筆記用具がギチギチに入っている。新たにボールペンが入る余地はない。
住居にはボールペン1本分のスペースはある。押し入れにも玄関にも(わたしの居場所がないと思うこともあるがそれは心理的な意味だ)。筆記用具は物理的に手元になくてはならない。
たかがボールペン1本分と馬鹿にはできない。山椒は小粒でもピリリと辛い。薪は楊枝の代わりにならず、長持は弁当箱にならない。関係ないが、柔よく剛を制し、窮鼠猫を噛む。
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source : 週刊文春 2022年11月24日号