この歳になって、「寝ても覚めても」状態がこんなに続くとは思わなかった。もう5日になる。
5日前、所用で出かけた帰りだった。くたくたに疲れている上に、いまにも雨が降りそうな空模様だ。両手に荷物、肩にカバンをかけ、駅から早足で帰ったら、途中、転ぶに違いない。高齢者に転倒は致命的だ。
タクシーに乗ることにした。何台かタクシーが並んでいるが、客はいない。急いで先頭のタクシーに乗ろうとして頭を下げた瞬間、天地がひっくり返った。
初めてだ。これまで数えきれないほど転んできたが、転ぶ原因はいつも、つまずいたことだった。今回は違う。つまずきもしないのにその場で転倒したのだ。
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source : 週刊文春 2022年9月29日号