冤罪とテレビ報道の在り方を問う勇気あるドラマ。そんなふうに単純化して語られがちな『エルピス―希望、あるいは災い―』であるが、ここにきて展開はより複雑の度合いを深めた。

 テレビ局の人気アナだった浅川恵那(長澤まさみ)が、新人ディレクターの岸本拓朗(眞栄田郷敦)に、無実の死刑囚を救う検証番組やりましょうと頼まれ、ドラマは始まった。

長澤まさみ ©文藝春秋

 しかし政治や社会への関心も知識もゼロの岸本はあっさり撤退し、浅川は神奈川県の八頭尾山で起きた連続少女殺害事件の真相を、一人で追うと決意する。

 しかし展開はネジれ、二人の関係もギクシャクし、立場はいまや逆転した。

 第5話から直近の8話にかけ、ドラマは岸本を中心に動いた。取材のイロハも知らず、法律や裁判にも無知な彼が現場に足を運び、証言を集めていく。

 逆に浅川は、局内の力関係を考慮し、事件の再取材から距離を置きだす。

 岸本はついに、松本死刑囚有罪の決め手となった目撃者の証言が虚偽というスクープを自力でとり、警察や検察に気を使う報道局を出し抜き、深夜のお色気バラエティ番組で放映する。

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source : 週刊文春 2022年12月29日号