「どうしたら、ええんじゃあ!」古沢良太は凄惨な事件をどう描く

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亀和田 武
エンタメ 芸能 テレビ・ラジオ

 面白いじゃないですか、松本潤が演じる『どうする家康』。今川家に人質として送られていた若き日の家康が、手製の玩具でままごと遊びに興じるシーンに、これが大河かと不満を覚える視聴者がいるのにはビックリ。大河ドラマに何を求めているんだろう。

 桶狭間の戦いで、金ピカの鎧兜(よろいかぶと)が脱ぎ捨てられてるのを見つけた家臣の石川数正(松重豊)が「逃げおったなぁ!」と呆れ、怒る場面がある。大雨の中、雑兵にまぎれて戦場を逃げまわり「もう、嫌じゃあ!」と泣き叫ぶ松潤=家康は人間味があふれて可愛い。

 今川義元(野村萬斎)の家臣の娘、瀬名(有村架純)と一緒になるが「弱虫、泣き虫、力も弱いし、心も弱いし、お腹も弱い」とまでいわれ「でも、そういう殿が好き」と愛されて、脚本の古沢良太の家康への想いが伝わる。

古沢良太氏 ©文藝春秋

 とはいえ、弱肉強食の戦国時代だ。織田、今川、武田など強力な戦国武将に囲まれた三河の領主は、いかに乱世を生き抜いたか。弱虫のサバイバル術とは。

 印象に残るのは、義元の息子、氏真(溝端淳平)との手合わせだが、いつもボロ負け。その氏真が瀬名を側室にしたいといい、義元が御前試合で勝った者に与えると提案。すると棒術でまた歯がたたない家康だが、寝技にもちこみグレイシー柔術か第一次UWFの佐山聡もかくやという関節技を決めて逆転勝利だ。

 義元は、おまえは人質だからこれまでわざと負けていたのだろうと評価するのだが、なにしろ弱虫、泣き虫だから、あの瞬殺の柔術が実力か偶然かわからず、却って興味が湧く。

 私が小学生のころ、家康といえば“狸オヤジ”だった。それが名君と神格化されたのは、いつからか。山岡荘八の全26巻の大ベストセラー『徳川家康』の影響をあげる人もいる。しかし山岡は戦中は従軍作家として戦争礼讃の記事を書きまくり、ヤバい筋との交遊でも知られた。司馬遼太郎とは対極だ。67年に完結した大長編は、むしろ読書人には家康嫌いをさらに増やした気もするが。

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source : 週刊文春 2023年1月26日号

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