新型コロナウィルスの流行が始まってから3年が過ぎ、岸田政権はその感染症法上の位置づけを「2類相当」から季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる方針を決定した。これまでの感染症対策を抜本的に見直し、例えば、マスクの着用や「自粛」のあり方についても、大きく緩和していく方針を打ち出している。通常国会でも、質疑する議員がマスクをすでに外していた。
僕は新型コロナの流行が始まって以来、感染症対策は状況に応じて柔軟に行うべきもので、学校で子供たちに体育の時間にまで一律にマスクを着けさせるようなやり方には違和感を抱いてきた。今回の方針決定で、ようやく日本でも大きな転換点を迎えていくことになる。
そのことに僕が感慨めいた気持ちを抱くのは、やはり楽天グループで2年前、ワクチンの職域接種を率先して進めた経験があるからだ。1つの会場で1日に5000回規模でスピーディーにワクチンを打てるオペレーションを、企業としていち早く構築したという自負もある。その背景には、当時の菅義偉首相や河野太郎ワクチン担当相らの強力なリーダーシップもあった。
この経験から学んだのは、感染症拡大のような刻々と変化する状況に対応していくためには、決して最初から完璧を目指そうとしてはならないということだ。常に変化する状況に対し、走りながら対策を講じ改善を繰り返していく。それは無謬性を重んじる官僚が、最も苦手とするやり方だったとも言える。
今後もコロナには幾つも流行の波があるだろうし、新たな変異株が発生すれば、当然、状況は再び変化するに違いない。政府は3年間の課題を総括することで、医療体制の更なる整備や、別の感染症が広がった際の準備や対応のための環境を構築していく姿勢を見せて欲しい。
国民の「怒り」には敏感
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source : 週刊文春 2023年2月23日号