4月9日に元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏が日銀の総裁に就任し、新体制が発足する。

 植田氏は1998年に日銀の政策委員会審議委員に就任し、総裁だった速水優氏のもとで、当時のゼロ金利政策や量的金融緩和政策などを支えてきた。その植田氏が、黒田東彦総裁の後任に就くということで、金融マーケットはその手腕に強い関心を持っている。

 黒田氏の進めてきた「異次元緩和」については賛否両論あるだろう。ただ、僕自身は2013年から始まった任期の前半については一定の評価ができると思っている。長引くデフレからの脱却を試み、1万円弱だった日経平均株価を2万円中盤から3万円台にまで浮上させた。金融政策だけの効果ではないかもしれないが、日本経済に前向きな光を灯したと言えるのではないだろうか。

 問題は任期の後半だ。「異次元緩和」を継続し、結果的に過度な円安を導いたことについては厳しい評価をせざるを得ないと思う。何しろこの1年間の円安で、言ってみれば日本の価値は3分の2にまで落ち込んだことになる。

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source : 週刊文春 2023年3月30日号