2月中旬、「The World Government Summit(世界政府サミット)」に参加するため、僕はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイを訪れた。ドバイには1月にも出張で滞在したこともあり、今年は中東との縁が深い1年なのかもしれない。
UAEの経済的な中心地が華やかな都市ドバイなら、政治的な中心地が首都のアブダビだ。そのアブダビに立ち寄った際に、忘れられない場所があった。リゾートエリアとして知られるサディヤット島にある「ルーブル・アブダビ美術館」。UAEがフランスと提携して建てた国家プロジェクトで、ルーブル美術館の“別館”とも呼ばれる美術館だ。海の上に浮かぶような幾何学模様のドームが印象的で、いわば文化の交差点としての役割も担っている。
この美術館ではゆっくり鑑賞する時間はなかったけれど、現地で訪れたオフィスに展示されていた絵画に、アラブ世界の昔の姿を描いた作品があった。石油が出る前の生活を描いたもので、釣り竿を持ってラクダに乗った人の姿が描かれていた。かつてこの地域では魚を釣れれば食事が賄えるけれど、釣れなければ今日は何も食べられない――そんな生活を送っていたことがよく伝わってくる。
その絵を観ながら僕が心に強く感じたのは、いずれ石油が無くなった時、我々の生活はこうなるんだ、という中東の人々の切実さだった。彼らと話していると、脱石油や新たな投資に対する熱意に、並々ならぬものがある。実際、サウジアラビアなどは砂漠が国土の大半を占めているが、そこに太陽光パネルを敷き詰める計画も進められていると聞く。
真っ白な民族衣装が
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source : 週刊文春 2023年4月6日号