(にしでらごうた ミュージシャン。1973年京都府出身。「ノーナ・リーヴス」のバンド活動のほか作詞・作曲家、音楽プロデューサー、文筆家、MCとして活動。著書に『プリンス論』『90’s ナインティーズ』など。今年3月22日、3rdソロ・アルバム『Sunset Rain』をリリース。)

 

 父方の家は安土桃山時代から430年続く、浄土真宗の寿願寺という兵庫県加古川市にあるお寺です。現在は父が十五代住職で、僕の6歳下の弟の阿楠が後を継ぐ予定。弟の名前は釈迦の弟子アーナンダから、僕の郷太はゴータマ・シッダールタから父が命名。おしゃべりする前からお経を覚えさせられました。でも父はもともと英語の先生だったんですよ。車の中では英語レッスンのカセットテープがずっと流れてました。

 大学時代に結成した「ノーナ・リーヴス」のバンド活動の傍ら、SMAPやV6をはじめ数多くのアーティストに楽曲を提供。音楽プロデューサー、文筆家、MCとしての顔も持つ西寺郷太さんは1973年、京都で中学の英語教師をしていた父と小学校教師の母の間に生まれた。

 最初の家の記憶は、1歳から住みはじめた京都市菅田町の公団住宅の10階の部屋です。新築風呂付きの2DKで、ひとつの部屋の壁の1面だけ「自由に落書きしていいよ。この部屋を出るとき元通りにするから」と両親が嬉しいことを言ってくれて。その壁に落書きし続けて弟が生まれて引っ越すまでの間に、壮大な絵画ができあがりました(笑)。

 5歳頃、紙飛行機をプラモデルみたいに組み立てて作る本を親父が買ってくれて、一緒に作って10階の窓から飛ばした思い出もあります。「ライトフライヤー号」と名付けられたその紙飛行機が驚くほど遠くまで飛んで、新築住宅の建築現場に消えてしまった。2人で探しに行ったけど見つからなくて、親父にお願いしてもう1冊同じ本を買ってもらって作り直したけど、それはなぜか全然飛ばなかったんですよね。

長屋のようだった吉祥院のマンション。“もっちゃん”に音楽のてほどきをうける

 母親との思い出でよく覚えているのは、3歳の誕生日に近所のスーパーのイズミヤ伏見店で開催されていたカラオケ大会で、都はるみの「北の宿から」を一緒に歌ったこと。幼い僕が歌うとやんやの喝采を浴びたんです。あの快感が歌手になりたいと思ったきっかけかもしれません。参加賞は自分の歌を録音したテープ。大人になってから聴いたらデュエットしていた母親の歌声がマルシアさんみたいに素直で上手くて驚きました。母方の祖父は宮古島、祖母は徳之島出身で戦後東京に暮らした家系なので、母を通じて奄美や琉球のリズム感のようなものが自分にも流れている気がしてます。

 あるとき家のベランダから僕が下を覗いているのを見た母が危ないと思ったらしく、弟が生まれた直後に引っ越しました。次に住んだ家は、長屋のような若い夫婦たちのコミュニティが生まれていた京都市吉祥院前田町の新築マンション1階の部屋。庭付きの3LDKで僕の部屋もあって、小中高の12年間をここで暮らした経験が僕の将来の方向性を決定づけました。親が団塊の世代の僕自身第二次ベビーブーマーで、このマンションにも子供たちが多くて。

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source : 週刊文春 2023年4月13日号