今年の大河ドラマ「どうする家康」は、久々に徳川家康が主人公だ。戦国最後の勝者となった彼の70年余りの生涯は、戦国後期の主要な有名事件・合戦と重なり合う。この時代を描くドラマの主人公としては最適な人物と言えるだろう。

 ただ、もったいないことに、今作はゲーム画面のような画調や無国籍感のある衣装などで主にオールドファンの反発を買ってしまっているようだ。擁護派は「しょせんドラマは作り物なのだから」と反論を展開しているが、大河ドラマを通じて、その時代の勉強をしたい、その時代の空気を感じたいと思っている歴史ファンの気持ちも、僕にはよく分かる。時代劇で新しい試みをする場合、世間一般の人が抱く時代イメージとどう折り合いをつけていくか、というのは、永遠の課題だろう。

 僕個人は、前作「鎌倉殿の13人」同様、史実とフィクションを織り交ぜた脚本の構成が巧みで、けっこう楽しく見させてもらっている。とくに今作で興味深いと思ったのは、いわゆるマイノリティーの人たちを重要な脇役として多く登場させているという点だ。劇中では、負傷したため足を引きずっている武将や姫君、吃音でうまく喋れない家臣、果てはレズビアンであったことをカミングアウトする側室まで描かれていた。

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source : 週刊文春 2023年4月20日号