当時の流行歌とは一線を画する鮮烈なサウンドで「日本のビートルズ」と呼ばれたチューリップ。「心の旅」「青春の影」「サボテンの花」などの名曲の数々は、昭和の若者の青春を彩り、今も歌い継がれている。
取材・構成 梶山寿子
(ざいつかずお/1948年、福岡県生まれ。71年7月、チューリップを結成。チューリップではアルバム47枚、シングル41枚をリリース。並行してソロ活動も行い、78年にアルバム「宇宙塵」、79年にシングル「WAKE UP」をリリース。解散後はソロとして活動し、93年にはセルフカバーした「サボテンの花」が大ヒット。)
福岡の高校二年生だった1964年夏、ビートルズの主演映画『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』を観たことが、僕の人生を変えました。健康的で毒のないアメリカンポップスとは違う、ある種の歪みを持ったサウンド……。ビートルズの音楽に雷に打たれたようなショックを受けて、その虜になった。ビートルズからは生涯逃れられないと思います。
彼らの音楽に魅了されて以来、頭のなかはビートルズでいっぱい。ひたすら曲を聴きまくり、ギターを練習。66年の武道館コンサートにも、福岡から夜行列車に乗って駆け付けました。三階の後ろの席でビートルズは豆粒くらいでしたが、十分に刺激的でしたね。
「ビートルズみたいになりたい」とバンド仲間を探したものの、手を挙げる学生は少なかった。アメリカでベトナム戦争の反戦歌が広がった影響で、若者の音楽の主流は社会的なメッセージを含んだフォークソングだったのです。
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source : 週刊文春 2023年5月4日・11日号