週刊文春 電子版

罪深い人々が沈む愛憎の沼|宇垣美里

宇垣総裁のマンガ党宣言! 第97回

宇垣 美里
エンタメ 芸能 読書

 霊感を持たず、頑健な身体を持ち、少々目立つところのある私にとって、災難を運んでくるのはいつだって他者だった。だから、生きている人間が、一番怖い。もっと言うと本人にさえコントロールできないような人間の情念が一番怖い。『兄だったモノ』を読んでいると、薄気味悪い化け物以上にじっとりとした余韻を残す歪な愛の形に、改めて強くそう思わされ、ゾワゾワとした戦慄が止まらない。

 兄の騎一郎を亡くした女子高生の鹿ノ子は、兄が最期を共にした小説家の男性・聖(ひじり)に恋をした。墓参りなどにかこつけ、聖の住む広島へ赴き交流を深めるが、彼のそばには緑の目をした怪物となりはてた“兄だったモノ”が。怪物から聖の命を守るため、そして、自らの恋を成就させるために、鹿ノ子は死んだ兄に成り代わるように振る舞い始める。

初月300円でこの続きが読めます。

有料会員になると、
全ての記事が読み放題

  • 月額プラン

    1カ月更新

    2,200円/月

    初回登録は初月300円

  • 年額プラン

    22,000円一括払い・1年更新

    1,833円/月

  • 電子版+雑誌プラン

    29,500円一括払い・1年更新

    2,458円/月

有料会員になると…

世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!

  • スクープ記事をいち早く読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
  • 音声・動画番組が視聴できる
  • 会員限定ニュースレターが読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 週刊文春 2023年5月25日号

文春リークス
閉じる