二度の事故で人生を変えられた。面倒な俳優と言われても好きなように生きてきましたね。|古舘寛治

新・家の履歴書 第836回

後藤 匡宏
ライフ ライフスタイル

(ふるたちかんじ 俳優。1968(昭和43)年、大阪府生まれ。米国で演技を学び、帰国後、俳優として活動。主な出演作にドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』、映画『淵に立つ』など。現在放送中のドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK BSP)に出演中。)

 

 27歳のとき、交通事故で死にかけました。

 ある晩、友だちの車の後部座席で眠り込んでしまったんです。目を覚ましたら、なぜか病院にいた。最初は何が起きたのか理解できなくて、「ここはどこ? 私は誰?」って文字通り思いましたね。

 数々の映画やテレビドラマで活躍する名バイプレイヤー、古舘寛治さんは、青年時代に壮絶な事故を経験している。1995年、アメリカ・ニューヨークの学校で演技を学んでいた頃のことだ。あるパーティーからの帰途、友人の運転する車が急カーブを曲がり切れずにスピンして大破。同乗していた古舘さんは意識不明のまま救急搬送された。それは、人生観を変えてしまう出来事だったという。

 首の骨にひびが入って、顎が割れて、歯はグラグラ。肋骨も何本か折れて、肺が1つ潰れていた。いまも跡が残ってますけど、おでこと後頭部に2本ずつ金属の棒を突き刺して、輪っか状の装具をつけました。それをアメリカンフットボールのプロテクターみたいなものにつなぎ、首が絶対に動かないように固定して。そんな状態なのに、アメリカの医療費は高いから、10日で退院することになりました。

 病院から出るとき、外の景色が視界に入ってきたんですね。真っ青な空と緑の芝生。木の枝が風にそよそよと揺れている。あまりの美しさに、身動きがとれなくなってしまった。そして、「この世は天国なんだ」と思ったんです。普段は意識せずに暮らしているけれど、実は奇跡的な世界に僕らは生きている。ひどい事故でしたが、おかげで大事なことに気づけたのはラッキーだったと思います。

 命拾いして以来、「残りはおまけの人生」と考えるようになりました。だから、好きなことをやって生きていこうと。もう55歳なので、おまけのほうが長くなりましたけどね。

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source : 週刊文春 2023年6月29日号

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