東京女子医科大学病院ICU(集中治療室)で、60代男性が医療ミスにより死亡した事故(#10を読む)に関して、新たな事実が判明した。死亡原因となった処置を、担当医はインフォームドコンセント(後述)がないまま実施して、事故調査委員会に「勢いでやってしまった」と述べていたのである。このほかにも、不適切な対応を重ねていたことから、東京都は厳しく指導を行なったという。
命を守る要というべきICUで、なぜ患者の命は奪われたのか。迷走を続ける女子医大で起きた、死亡事故の真相を独自取材で追った──。
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事故調査委で明らかになった、医療安全を軽視した杜撰な対応
2月10日午後、女子医大病院・総合外来センターの大会議室で行われた病院運営会議に集まったのは、全診療科の教授たち約60人。そこで、去年起きたICUの死亡事故について、調査の中間報告が行われた。女子医大の事故調査委員会は、他の大学病院から3人の専門家を招き、担当医のヒヤリングを行うなどした上で、報告書を作成したという。そこで明らかになったのは、医療安全を軽視した杜撰な対応だった。
まず、死亡事故の経緯を振り返っておきたい。
去年9月下旬、60代の男性が自宅で強い腹痛と下血(*注1)を起こし、女子医大病院に救急搬送された。だが、救急外来の医師は、原因を特定できず、男性を一般病棟に入院させている。翌朝、男性の容態が悪化して心停止してしまう。救命措置で心拍は再開、人工呼吸器が装着された。そして消化器外科医Aが、腹部の緊急手術を行い、男性は一命を取り留める。ICUに移された男性の集中治療は、専門ではない消化器外科医Aが担当することになった。
(*注1:肛門から血液成分が排出されること)
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source : 週刊文春