時の流れがゆっくりした場所で本を読む時間を取り戻したい。蔵書3000冊を収納する理想の家。|幅 允孝

新・家の履歴書 第842回

渡辺 紀子
ライフ ライフスタイル

(はばよしたか ブックディレクター。1976(昭和51)年、愛知県生まれ。有限会社BACH代表取締役。多くの図書館施設で選書・配架を手がける。最近では早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)や長岡市立図書館「互尊文庫」を担当。著書に『差し出し方の教室』など。)

 

 生まれは愛知県津島市です。本当に何もない所だと思って育ちましたが、実は詩人の金子光晴や、イサム・ノグチの父親で詩人の野口米次郎の出身地なんだと、あとから知りました。

 最初の住まいの記憶は小さな平屋です。父、母、祖父、祖母、僕の5人で住んでいました。それで2歳年下の弟が生まれた頃、父が家を建てたんです。2階建ての大手ハウスメーカーの初期型住宅だったんですが、その建物の壁に穴をあけて、もともと住んでいた平屋の一部を合体させたという不思議な造りの家でした。2階には人工芝を敷き詰めた大きなベランダがあって、そこで夢中になってサッカーの練習をしてましたね。

 ブックディレクターの幅允孝さんは、書店や公共図書館をはじめとして、病院、ホテル、オフィスなど人が集まる様々な場所に“ライブラリー”をつくり、そのコンセプトに合わせた本を選んだり、ふさわしい“棚づくり”をしたりする、本のプロフェッショナルだ。
 さぞかし本ばかり読んでいる子どもだったのではと思いきや、意外にもスポーツ大好き少年だった。

 小学生の時は少年野球とボーイスカウト、中学校ではバレーボール部、高校では水泳部の主将でした。特に水泳は3歳から18歳まで続けていて、県大会で決勝に残れるくらいには真剣にやっていました。体を動かすことが好きだったんですよね。一方、学校の成績は「オール5」の神童でした。あ、音楽だけは「3」でしたけど(笑)。

小学生から本屋はツケ払い、客注も。就職先もやっぱり本屋さん!

 もちろん本も好きでした。当時、ガンプラやキン消し、ビックリマンシールが流行っていて、そういうのを買うと、あっという間にお小遣いがなくなってしまう。そこで本屋に行くんです。名古屋鉄道津島線の青塚駅前にあった本屋は、小さいながらに雑誌からマンガ、ブルーバックスまで、全ジャンルの本が置いてあるお店でした。とても牧歌的で、立ち読みどころか座り読みもOK。しかも我が家には「本代は小遣いとは別」というありがたい決まりがあったので、金欠になって逃げ込む先は、いつも本屋さんでしたね。

 さらにある時から、本屋の支払いは購入するごとではなく、月末払いに。幅少年は、小学生ながら「ツケ」で好きなだけ本を買うことを覚えてしまう。

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source : 週刊文春 2023年8月10日号

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