近所のスーパーで私が最も信頼している素晴らしいレジ捌きの店員さんは、おそらく東南アジア出身だ。銀座へ行くと、近頃はもう日本人より海外からの観光客の方が多いような気さえする。気づけばどんどん国際色豊かな街へと変わりつつある東京だけれど、その実人々の感覚は全然変わってないみたいだ。だって、ふらりと乗り込んだタクシーで、ふとカフェで聞こえてきた会話で、言葉や肌の色が違う人のことを揶揄する言葉を聞くような経験、何度もあったもの。ああどうか、そんな感覚をまだ捨てきれない人にこそ『東京サラダボウル』を読んで欲しい。この本は、変わりつつある東京という街と、そこに生きる“外人”とひとくくりにされがちな人々の困難に寄り添った、私たちの生きる世界を舞台に描かれた作品だから。
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source : 週刊文春 2023年10月19日号