11月に入り、イスラエル軍によるガザ地区への地上作戦が本格化している。現地では何が行われているのか。第三次中東戦争にイスラエル軍の戦車部隊の士官として参戦、その後、イスラエル軍の顧問や米国家安全保障会議のメンバーなどを歴任したエドワード・ルトワック氏(81)が、作戦の全貌を解き明かす。
(1942年、ルーマニア生まれ。イスラエル軍元顧問。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、1975年に博士号を取得。同年米国防省長官府に任用される。イスラエル軍顧問やホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーを歴任した。著書に『戦争にチャンスを与えよ』『ラストエンペラー習近平』(ともに文春新書)、『ルトワックの日本改造論』(飛鳥新社)など。)
我々がいま、目撃しているのは、市街地戦(urban warfare)の最新版だ。
イスラエル軍は、ハマスがガザ地区に構築した全長500キロに及ぶとされるトンネルの破壊を目指している。このトンネルには、ハマスの武器庫があるだけでなく、ロケット弾の発射場所や、司令部なども存在している。ハマスは決して地下トンネルに民間人を近づけない。一方で、指導者や作戦部隊は、自分たちを守り、ロケット弾を飛ばすために利用し続けている。
今回の作戦では、このトンネルにイスラエルの戦闘工兵やその護衛部隊が入り、ハマスの警備兵を撃退し、解体用爆弾を設置、破壊することになる。
しかし、ハマスもトンネルを守るため、この数年で軍事力を高めてきた。イスラエル軍に思わぬ犠牲が出ることもあるだろう。イスラエル軍にとって最も危険な箇所は、トンネル内部ではなく、その手前にある。
トンネルに近づく途中に、ハマス兵が待ち構えており、狙撃や迫撃砲弾によって死傷者を出し続ける可能性がある。したがって兵士を防護しながら、入り口まで届けるための車両が必要となるのだ。
そこで、この戦闘における最大のポイント、装甲車両が登場する。イスラエル軍が使っているのはいわゆる「戦車」ではなく、歩兵戦闘車と呼ばれるものだ。
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source : 週刊文春 2023年11月16日号