鳥羽・伏見の戦い|伊藤秀倫

蒼空に擲つ 永山弥一郎を探して 第15回

伊藤 秀倫
ライフ 歴史

戊辰戦争の緒戦で中村半次郎を驚かせた弥一郎の豪胆すぎる逸話

 

【前回まで】王政復古の大号令直後の京都で弥一郎らは会津藩士との間で刃傷事件を起こす。作家の中村彰彦氏の協力で斬られた会津藩士が佐川又四郎であったことが判明。さらにこの事件を記録した「春山田中日記」の謎も意外なところから解ける――――本連載は西南戦争で散った薩軍三番大隊長・永山弥一郎の生涯を掘り起こす「同時進行歴史ノンフィクション」である。

【慶応4年(1868)1月3日 伏見奉行所】

 伏見奉行所の集会所では、二十余名の新選組隊士が酒を酌み交わしていた。いずれも頭部を鉢金で覆い、陣羽織の下には具足(鎧)を着込んだ戦支度である。

「どうも、うまくねぇな」

 新選組二番隊組長の永倉新八が浮かぬ顔で呟いた。

「うまくない? 永倉さん、これ、灘の銘酒ですよ」

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source : 週刊文春 2023年12月14日号

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