木原誠二前官房副長官の妻X子さんの元夫・安田種雄さんの怪死事件、通称「木原事件」。かねてから「事件性はある」と断言している元取調官・佐藤誠氏は、自身の連載『ホンボシ』で捜査当時のことを明かしています。X子さんは佐藤氏に何を語ったのか。Y氏との面会では何があったのか。「ここでしか読めない」木原事件の秘録とは――。傑作選で振り返ります。
木原事件(1)リーク|ホンボシ 木原事件「伝説の取調官」捜査秘録 第1回
「週刊文春」の記者から初めて連絡を受けたのは、2023年の7月13日のことだった。その電話は直接、俺のところにきたわけではなかった。自宅の隣に住んでいた知人の家に記者が来て、名刺を置いていった、と連絡があってね。俺は文春にあの話をするべきかどうか、しばらく考えていた。
木原事件(2)露木長官|ホンボシ 木原事件「伝説の取調官」捜査秘録 第2回
7月13日、露木康浩長官は記者会見で、木原氏の妻が元夫の殺人事件について警察庁から2018年に聴取されていたという報道について、「捜査等の結果、証拠上、事件性が認められない旨を明らかにしている」と述べた。安田種雄さんの不審死は「自殺」であったと警察庁長官自らが語り、今後の再捜査は行わないと語ったわけだ。
木原事件(5)Yという男|ホンボシ 木原事件「伝説の取調官」捜査秘録 第5回
さて、大塚署で女性刑事が事件を「掘り起こした」後、種雄さんの不審死事案は警視庁捜査一課特命捜査対策室特命捜査第一係、通称「トクイチ」に持ち込まれた。その捜査に俺も加わることになったわけだが、捜査が大きな動きを見せたのは6月のことだった。
木原事件(7)ある写真|ホンボシ 木原事件「伝説の取調官」捜査秘録 第7回
以降、X子の聴取は連日のように続いたが、彼女はその度に完璧なメイクをして、香水をつけて長い髪をきれいに結っていた。着ている洋服も常に変わった。その姿があまりに完璧なので、警視庁本部の裏口から取調室に入るまでの間に、すれ違った多くの警察官が思わず振り返ったほどだ。
木原事件(8)ポリグラフ|ホンボシ 木原事件「伝説の取調官」捜査秘録 第8回
そんななか、この取り調べの中で一つの山場になったのが、初日に使おうとしたポリグラフ(嘘発見器)をめぐるやり取りだった。
「種雄君を刺したってなってるけれど、本当に刺した?」と聞くと、X子は黙ってしまう。「私はやってません」と言えばいいのに、彼女は黙って何も言わなくなるんだ。
木原事件(12)ラーテル|ホンボシ 木原事件「伝説の取調官」捜査秘録 第12回
当時、俺は本当にそのまま捜査が中止になるとは、まだ思っていなかった。他の捜査員も同様で、捜査の再開を見込んで11月にはX子の働いていた池袋のキャバレーの元従業員の聴取も行っている。
俺自身にも「国会が終われば捜査が始まるかな」という思いがあったが、結果的に翌年の5月に告げられたのは、「一切もう何もやるな」という指示だった。
source : 週刊文春 電子版オリジナル