「やることはいつもと変わりません。お手元のフリップに面白い答えだけを記入していただいて、発表していただければなと。くれぐれも面白い答えだけを」
大会前にそう宣言したのは、松本人志の代理で『IPPONグランプリ』のチェアマンを務めることになったバカリズムだ。彼はこれまで28回放送された同番組に第2回を除く27回出演。そのうち最多の6度優勝した“絶対王者”。強すぎるゆえにハードルが上がり、充分IPPONだろうという回答がIPPONにならない場面が少なくないほどで、その優勝回数以上に象徴的存在だった。だから、バカリズムが「チェアマン代理」というのはこれ以上ない納得感で、その真っ当さの分、時代が動いた感じがした。
今大会はそれ以外にも異例含みの大会だった。コロナ禍以降、当日欠場者が出たときのために設けられた「スーパーサブ」枠。これまでは使われることがなかったが、今回、笑い飯・西田の体調不良によりサルゴリラ赤羽が繰り上げで出場することに。相方の児玉もエントリーしていたため、結果的に初めて同じ回にコンビ揃っての出場となった。また、これまで極端に少なかった女性芸人も2人出場。ハリセンボン箕輪は実に第1回以来、ヒコロヒーは早くから『IPPONスカウト』で高評価を受けていたが、遂に出場が叶った形だ。
そんな今大会、いつもよりもいい意味で緊張感が薄れていたように感じた。みんなが伸び伸びと大喜利を楽しんでいた。それは松本人志が近くで見ているというプレッシャーから解放されたからか、絶対王者バカリズムがプレイヤー側にいなかったからか、たまたま出場者のメンツがそうさせたのか、あるいは単なる気のせいかもしれない。だが、毎回のように初出場組は番組の“洗礼”を浴びるかのように最初のIPPONが取れずに苦戦するが、今回はみな早々にIPPONを獲得したのは事実。結果、どちらのブロックも最後のお題まで全員が勝ち残るチャンスがある大接戦となった。
プレイヤーでなくなったことを惜しむ声もあったバカリズムだが、その存在感は抜群。「かなりのリスクを冒して答えたのに」「すごいのは、この局面であの長い文章を出せるハート」「たくさん出したいタイプのお題」など回答者の心理を代弁するかのような解説は、出場時の彼の思考を覗くようで面白かった。
決勝戦は麒麟・川島vsロバート秋山。いきなり2本を先取しリーチをかけた秋山に川島が2本取り返して最後のお題。秋山はここでフリップを使わずに答える奇策に。点数が入るまでキャラを演じ続け、“力技”でIPPONをもぎ取り優勝した。それは「楽しさ」が充満していた今大会を象徴したような勝利だった。
『IPPONグランプリ』
フジテレビ系 不定期
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source : 週刊文春 2024年2月22日号