「もうね、記憶があいまいで、言えることが何もないんだよ」
かつて“天皇”と呼ばれた男の威厳は、すでにない。背の丸まった白髪の老人は、右耳を記者に向け、力のない笑みとともに約30分にわたり言葉を紡いだのだった。
昨年12月、過去30年以上にわたる組織的不正が発覚したダイハツ工業。データの捏造や改ざんが繰り返され、エアバッグの衝突試験をタイマー作動でごまかすなど命に直結するような悪質な不正も行われていたことが明らかになった。
ダイハツは自動車を組み立てる国内全工場の稼働を昨年12月26日までに全面停止。今年2月以降、一部車種の生産を徐々に再開しつつあるが、全面再開の目途は立っていない。
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source : 週刊文春 電子版オリジナル