世界の猫を喜ばす。高邁な精神と裏腹に、新入社員にボロ家をあてがったことで批判を浴びたいなば食品。歪んだ企業体質は、社長夫人の横暴によって培われたものだった。そしていま、法令違反の疑惑までもが浮かび上がり…
主力商品はツナ缶やタイカレー缶、愛らしい猫が脇目も振らずしゃぶりつくCMでおなじみの「CIAOちゅーる」。売上高1350億円、従業員数4800人を誇る大企業・いなば食品が揺れている。
震源は、小誌が先週号で報じた「いなば食品 新入社員9割が辞退 女帝の“ボロ家ハラスメント”」と題した記事だ。
悲劇は静岡県内の工場配属が決まった、一般職19人の身に起こる。いずれもこの春に学校を出たばかりの新社会人たち。
東京での入社式を終えて迎えた3月28日、新入社員たちは新生活を送ることになる新居に案内された。そこで新人たちが目にしたのは、ボロ家と呼ぶほかない、あまりにも劣悪な住環境の“社宅”だった。
入社を辞退した女性が憤る。
「立地も最悪で、老朽化した築55年の物件もあった。近いうちに南海トラフ地震が来ると言われているのに、命を軽んじているとすら思いました。入社式では『社員は家族』という標語を全員で唱和しましたが、とても家族を住まわせるような場所ではありませんでした」
木製の鍵にガタのきたトイレ、天井からは絶えず雨漏り――新生活を悲観して、19名のうち16人、じつに9割に迫る新入社員が入社を取りやめたのだった。
そうした内容を報じた先週号の発売直後から、小誌にはいなば食品に関する告発が殺到した。匿名の情報提供も含めると、その数は少なくとも43件にのぼった。
小誌はそれを受け、いなば食品関係者14人へのヒアリングを実施した。取材で浮かび上がったのは同社の異様な実態である。
現役社員A氏が語る。「この度は大変お騒がせしました。お恥ずかしながら弊社は数々の問題を抱えています。同族経営の弊害に社員は長い間、苦しんできました」
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source : 週刊文春 2024年4月25日号