季節がめぐり、あの日の雪が溶け、葉桜の緑が濃くなっても、人の命が失われた悲しみと避難生活の疲れは癒えない。祭りどころ能登に、今年も夏の気配が近づく。復興の2文字が重くのしかかる不屈の人々の決断を追った。

 能登半島は、“祭りの宝庫”として知られる。その象徴が「キリコ祭り」と総称される灯籠神事だ。地域ごとに個性の異なるキリコが勇壮に町内を乱舞し、能登の地を照らし出す。

珠洲市宝立町の七夕キリコまつり(石川県観光公式サイトより)

 元日に半島を直撃した最大震度7の巨大地震は、能登全域に獰猛な爪痕を残した。歴史的な災禍は、能登が誇る伝統祭事の情景すら奪っていくのか。祭りの担い手たちは、苦悩と葛藤の末、奮い立つ――。

 能登地方のキリコ祭りは、「灯り舞う半島 能登〜熱狂のキリコ祭り〜」の名称で、2015年に日本遺産に認定された。

 珠洲(すず)市で写真館「サカスタジオ」を経営する写真家の坂健生さんが語る。

「各町が一体になる熱狂は見応え抜群。能登には“お祭りオタク”のアマチュアカメラマンもたくさんいます。どこも今年の開催は困難かもしれませんが、この先祭りは、再興の一歩になっていくと信じています」

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source : 週刊文春 2024年5月2日・9日号