『JKと六法全書』を完走してしまった。初回を見て「おい、今『虎に翼』やってるところにコレを出してくるって、スゲエ心臓だな」と半ば面白がっていたのだが、最終回まで見終わってみると別の感慨が湧いた。

 初回ですでに匂わされていたが、これは「悪の検察=巨悪=為政者の闇に立ち向かう」話だった。『虎に翼』よりも『エルピス』に対抗したドラマだったのだ。ぜんぜんそんなふうには見てもらえてなさそうだが。

 テレ朝は朝日だから反権力なんだろうと軽い気持ちで見ていたら、途中で「扇谷正親」という「老人ホームから政界を動かす元法相」のいかにも曰くありげにワルそうなじいさんが登場する。「扇谷」といえば朝日新聞出身で『週刊朝日』の名物編集長・扇谷正造だろう。あえてこのじいさんに扇谷正親とかいう紛らわしい名前をつけたりするので「これはテレ朝による、過去の朝日との決別宣言か」とか思ってしまったが、たぶん何も考えてないなこれ。

©cap10hkイメージマート

 そもそも「女子高生弁護士」という時点で『スケバン刑事(デカ)』みたいなもんだと思うじゃないですか、いくら制度上JK弁護士が可能であったとしても。そこに持ってきて、JK弁護士の同級生がクラスで集まって「みんなでみやび(JK弁護士)の力になろう! エイエイオー!」とかやってるのを見ると「マジメにやる気あるんか」と思うじゃないですか。

 しかし「悪事を隠蔽する国、それに手を貸す検察、ずるずると出てくる悪事、みやびの母の失踪の真相もそこにからむ?」なんて流れになっているのを見ると、まさに「体制の巨悪を暴く」という朝日らしい内容になっていく。『エルピス』は実在の冤罪事件をモデルにしたというんで話題になり、あたかも「ドラマが日本の闇に斬り込んだ」みたいに持ち上げられていたが、結局は「ドラマの中では冤罪が晴れてすっきり」で終わってしまって、その後日本の闇が晴れたということもない。ただのガス抜きかよと言いたくなった。みんなホメてたが。

『JKと六法全書』は、そんなガス抜きではなく、オリジナルな事件を扱っていて志が高い……のならよかったが、なんなんだろう、やたら出てくるふざけたような場面――大事な証拠がゴミに出されてしまった!という時に、黒木瞳が「おばあちゃん」と呼ばれてプンスカし続けるとか。あとは証拠書類があります!って言ったらその書類はほとんど読めないシロモノだった、でもJK弁護士がハッタリかましたら国が負けを認めましたとか――そりゃ『エルピス』がホメられるよな。

 みやびの母が行方不明で、その秘密はいかに……ってとこで終わってしまった。映画にでもなるんだろうか。しかしそれ、見なくてもいいと言いたい。

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source : 週刊文春 2024年6月27日号