見た瞬間目がクギ付け。『ブラックペアン シーズン2』の二宮和也演じる天才心臓外科医、天城雪彦。
テレビドラマにおける「天才外科医」は、「冷たい」「困ってる患者にそっけない」「金で動くと言うが金で動かない」「何でも手術で助けちゃう」「実はいいとこある」「終わってみれば弱い者の味方」「割とお茶目」がお決まりです。こういうキャラ、みんな好きだねえ。この天城先生もそういう人です。このすべてを兼ね備えている。おまけに銀髪で微笑みながら「さあ、ゲームの始まりです」とか言い出しそうな佇まい。さらに“生存率ゼロパーセントの患者をボクなら治せる”と言い放ち(それならゼロパーセントではないのでは……)、なんとか手術して下さい!とすがる患者家族(美少女)に「君とボクで賭けをしよう」とくる。少女が賭けに勝てば手術してあげるんだって。カネじゃなくて賭けで決める、というのが新機軸か。
しかし、いくら新機軸を入れたところで、この手のキャラはもう見飽きてんだよ!と言いたい。言いたいが、この天城先生には、もっと別の、何か目が離せないものがある。
まずその小ささ。
私は背の低い男が好きなのだが、二宮和也ってこんな小さかったんだ。知らなかったよ。出演者の中でひときわ小さい。「この男は何かがちがう」と、まず思わせる。そういう小ささ。
そして「天才的な手術技術」。それを見せるべく劇場で公開手術とかやって見せる。舞台上って埃まみれだが、ちゃんと無菌ブースみたいなの作ってその中でやるから大丈夫。満員の観衆が見守る中で、微笑みながら心臓直結の血管をすごいスピードで切って縫い合わせる。その描写が、やや独特なのだ。
よく、「外科医の能力は頭脳より手先の器用さ」と言われるが、天城先生の手術っぷりがほんとに「小さな男がチョコマカチョコマカ」と小器用に切ったり縫ったりしてて、米粒にお経書いてるみたい。いわゆる「テレビに出てくる天才外科医のカッコよさ」とは違うんだ。こっちのほうこそ新機軸だろう。
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source : 週刊文春 2024年8月8日号