私が初めて触れた講談での怪談は20歳の頃に聞いた「()(たん)(とう)()」でした。演じたのは父である八代目一龍斎貞山。これは中国明代の怪異譚集「剪燈新(せんとうし)()」に収められた一篇で、三遊亭圓朝師匠により翻案されて「牡丹燈籠(どうろう)」として有名になりました。妖しく美しい月湖のほとりに住む妻に先立たれた男が絶世の美女に出会う。2人は結ばれるのですが、じつは女が幽霊だったという話。怪談は怖くて、おどろおどろしいものという先入観が吹き飛びました。言葉や筋立て、情景描写がとても美しい。

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source : 週刊文春 2024年8月15日・22日号