(たなかまさし サイエンスコミュニケーター。カナダ・アルバータ大学で古生物学を学び、2010年頃から「恐竜くん」として活動。全国各地で恐竜展の企画・監修、子ども向けの体験教室やトークショーの開催、イラスト制作などを手掛ける。)
恐竜の専門家って、自分たちのことを「骨屋」と呼ぶんですよ。なぜなら恐竜の研究において骨はものすごく重要だから、いつも何かと気になってしまうので。例えば専門家どうしで豚足や鶏の手羽先を食べたりすると、骨を見ながら「これは右足」「これは左前足だね」なんて会話が飛び出す(笑)。骨を見たら反応せずにはいられないんです。
「恐竜くん」の名前で親しまれる田中真士さんは、研究機関や大学に所属しないフリーランスのサイエンスコミュニケーター。恐竜展の企画や監修、子ども向けの体験教室の開催など精力的に活動している。
そんな田中さんの恐竜への尽きない興味の原点は、両親、三つ上の姉とともに暮らしていた少年時代にあった。
物心ついた時に住んでいたのは、東京・多摩市の聖蹟桜ヶ丘駅近くのマンションです。間取りなどはあまり記憶がないのですが、母によると、「1階だったせいか、カビがひどくて、1年も住まず引っ越した」のだそうです。それで、幼稚園の途中で、府中市内の4LDKの賃貸マンションへ。
三つあった洋室のうち、一つは“物置部屋”として使っていました。広告代理店に勤めていた父は、年間300本も演劇を観る趣味人で筋金入りの変わり者。家にはさまざまなジャンルの本や演劇関係の資料がどっさりあって、とにかくモノが多かったんです。
母は専業主婦でしたが、学生時代は美大で日本画を専攻していました。その影響もあってか、僕もよく絵を描いていましたね。モチーフは動物、昆虫、妖怪、怪獣など。でも、恐竜に興味を持ってからは絵に描くのも恐竜がメインに。その後も、ずっと絵は描き続け、今では仕事で恐竜のイラストを描いています。思えば、ベースにはこの頃の経験があるのかもしれません。
8歳でカナダで恐竜を学ぶことを宣言。“恐竜ツアー”で思いを深くして……
そんな田中さんと恐竜との出会いは、小学1年生の時。上野の国立科学博物館で展示されていたタルボサウルス(アジアに生息したティラノサウルス科の恐竜)の全身骨格に一目惚れしたのだという。
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source : 週刊文春 2024年8月15日・22日号