大野寿子さんと難病の子たちが撒いた種　連載最終回

小倉孝保

2024/09/04

「悲しい話はしないで」生前、そう語っていた大野さん。8月30、31日の告別式は、彼女の撒いた種が受け継がれた瞬間だった。

〈これからは上で、和(かず)馬(ま)をはじめたくさんの星になったウィッシュチャイルドとともに頑張ってるみなさんにエールを送り続けてくださると思っています〉

　京都市に住む吉村伸(しん)は8月22日夜、フェイスブックに書き込んだ。大野寿(ひさ)子(こ)がこの日午後7時45分、自宅（千葉県）で73年の生涯を閉じていた。

　大野は長年、難病の子の夢をかなえる公益財団法人「メイク・ア・ウィッシュ」日本支部（MAWJ）で事務局長を務めた。交流した子は3000人を超え、星になった命も多い。吉村の長男和馬さんもその一人だ。5歳で筋ジストロフィーを発症し今年1月、29歳で永眠した。

　吉村は大野の死を和馬さんの遺影に報告した。

「そっちに行きはったよ」

　MAWJで夢をかなえた子を「ウィッシュ・チャイルド」と呼ぶ。

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source : 週刊文春 2024年9月12日号