(すずきのりたけ/1975年、静岡県生まれ。鉄道会社社員、グラフィックデザイナーを経て2008年にデビュー。『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で日本絵本賞読者賞受賞。『大ピンチずかん』(小学館)では絵本賞を総なめに。「しごとば」シリーズ(ブロンズ新社)など著作多数。)
昨年出版した『しごとへの道』は、様々な職業の人に取材し、今の仕事に就くまでの経緯を紹介した絵本です。希望通り順調に歩んできた人は少なく、皆さん回り道をしてここまで辿り着いている。僕も絵本作家になるまで遠回りをしてきたけれど、振り返ればそのすべてが今の自分につながっていると思うんですよ。
鉄道会社の会社員から絵本作家に転身した異色の経歴を持つ鈴木のりたけさん。子供が日常で直面するピンチの数々をユーモラスに描いた『大ピンチずかん』は、2023年の年間ベストセラー総合第1位を獲得。続編の『大ピンチずかん2』もあわせて125万部の大ヒットを記録中だ。
1975年、静岡県浜松市に生を受けた鈴木さんは、浜名湖東岸に位置するのどかな街で、両親と2つ上の兄に囲まれて育った。
叔父と一緒に溶接工場を営んでいた父は物づくりが得意で、実家も叔父に協力してもらって作り上げたそうです。1階はリビング、ダイニングと水回り、和室が1つ。2階は両親の寝室、兄貴と僕の部屋があり、庭には父お手製のブランコやウサギ小屋も。わんぱくだった僕は、2階の窓から抜け出して1階の屋根を走り回ったりしていました。
保育士だった母は、よく絵本を読み聞かせてくれたけれど、僕は本の虫というわけではありませんでした。ただ、記憶をたどってみると、加古里子さんの『海』や『宇宙』などの絵本を図書館で読んでいたな、と。絵を描くのも好きでしたが、キン肉マンなどのキャラクターをノートの隅に描く程度。将来、絵本作家になるなんて、周囲も僕自身も想像していなかったんです。
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source : 週刊文春 2024年9月19日号