(まえだぎん 俳優。1944年、山口県生まれ。64年、ドラマ『判決』で俳優デビュー。映画『男はつらいよ』(全シリーズ)やドラマ『渡る世間は鬼ばかり』シリーズほか、多数出演。俳優だけでなく、バラエティ番組の司会やゲストとしても活躍。歌手として『幻恋歌/凪の風景』をリリースした。)
おかげさまでデビュー60周年を迎えました。これまで働き詰めで、思えば休養はコロナ禍の間だけでした。仲間の中尾彬や地井武男、浜畑賢吉たちが逝ったのは寂しいけど、まだ小野武彦や高橋長英は頑張ってる。僕も負けずに、より一層、張り切ってやるつもりですよ。
『男はつらいよ』シリーズを始め、数々のテレビ・映画の演技で老若男女多くの人に記憶される名優、前田吟さん。前田さんは1944年、山口県防府市で、通信社記者の父と、タイピストの母との間に生まれた。
僕の実父は広島に投下された原爆で亡くなり、女手一つで暮らしに困った母は親戚筋に僕を預けたんです。養子に入った前田家では、僕が4歳の時に養母、11歳で養父が亡くなってしまって。それからは親類縁者をたらい回しでした。最初の4カ月は養父の親戚が入った開拓村。電気も通ってないところで山を切り拓く暮らしでした。その次は防府天満宮の傍に住む母の縁者の家。狭い離れで寝起きしていました。粗末な暮らしでしたが、身体は丈夫でね。野球や剣道もやりました。中学の成績は良かったので、地元にあった進学校へ進むことが出来たんです。
59年、県立防府高校へ入学するも1年で退学。前田さんは就職のため、大阪へ旅立った。
実母から金銭の援助はなく、育ち盛りで食費や制服などの衣類に金が必要。僕も居心地が悪いし、学校を辞めて外へ働きに出ようと決めたんです。
とはいえ、僕は一生勤め人でいる気はなくて俳優になりたかった。そのキッカケは小学6年生の時の学芸会。『西遊記』の沙悟浄役を演じて、担任の先生に誉められたのがとても嬉しかった。その後、黒澤明監督の『野良犬』(49年)や『七人の侍』(54年)を観て感激し、高峰秀子さんの自伝も読みました。そこに“苦労してる人ほど役者に向いている”みたいな記述を見つけて、憧れるようになったんです。
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source : 週刊文春 2024年9月26日号