膨大な手紙、手記、小説……自分の書くものが注目を集めることを知った木嶋の暴走が始まった。裁判への興味すら失い、注目されたい――異形の欲望だけが増幅していく。
「手紙を送ってから1年半後、突然、返事が来たんです。東京拘置所の住所でした。驚きました。なんで今頃、返事がくるんだろうって。すぐに返信して文通のようになった。『今、小説を書いていて、光文社の編集者とやりとりしている、いずれ発表する予定だ』と手紙で教えられました。その後、拘置所まで彼女に会いに行きました」(文藝春秋社員の片岡侑子)
◇
一審で死刑判決が出された2012年4月13日、木嶋佳苗の手記が朝日新聞デジタルに載った。
片岡はそれを読み、さいたま拘置支所にいる木嶋に「一度お目にかかれないか」と手紙を書いた。
「文章に魅かれたわけではありません。彼女に何かを発信したいという強い意志を感じたからです」
だが、返事はなかった。それなのに翌2013年11月、突然、木嶋から手紙がきたのだ。
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source : 週刊文春 2024年9月19日号