昨年の夏、BSで絶讃を博した『家族だから愛したんじゃなくて――』が、この夏、地上波でも放映されている。NHKも視聴者のニーズに迅速な対応ができるようになった証か。

 タイトル長過ぎなんで、いま世間的に流通している『かぞかぞ』の略称を、なんか違和感あるけど、おれも使います。

 世間からみれば“凄絶な悲劇”なのに、そんなもんカッカラカーンと笑いで撥ね飛ばしちゃう。『かぞかぞ』最大の魅力はこれだ。

 笑いがなくては、湿っぽくなる。悲劇を強調するあまり図式的で硬直したドラマだと、偽善の淀んだ腐臭に、反撥さえ覚える。

 前半にこんなナレーションが。「家族の死、障害、不治の病い。どれかひとつでもあれば、どこぞの映画監督が世界を泣かせてくれそうなもの。それ全部、うちの家に起きてますけど」。いい啖呵を切るねえ。

 そんな世界観のドラマで主役を張るなら、いま河合優実しかいない。共演者も演出も素晴らしいが、河合優実あっての芝居だ。

河合優実 ©文藝春秋

 

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source : 週刊文春 2024年9月19日号