60歳を超えてからの新しいライフスタイルを考える連続キャンペーン。第3回は毎日の生活の基礎となる食事を取り上げる。識者を取材すると、50代までとは違った6つの法則が見えてきた。目指すべき健康な食事とは。
健康的でアクティブなシニアライフを手にするために、大きな分岐点となるのが定年を迎える「60歳」の食生活だ。
管理栄養士で日本抗加齢医学会指導士の森由香子氏が、重要性について語る。
「いまの60歳は精神的に若く体力も十分ありますが、それでも体は確実に衰えていきます。また、多くの人は健康診断で、高血圧や糖尿病など何かしらの注意点を指摘されているのではないでしょうか。それは、食生活に改善の余地があるということと同義です。60代で食生活を整えることができず、持病のコントロールに失敗すると、80代、90代を迎えるころには、寝たきりになってしまう可能性がある。60歳の食事は、20年後から30年後を占う上で、非常に大事なポイントといえます」
森氏が言うように、日々の「食」は、健康長寿に直結する。日本人の約4000万人が悩んでいるとされる高血圧症の有病率は、国民健康・栄養調査(2019年)によると「50歳〜59歳」は35.7%なのに対し、「60歳〜69歳」では、56.8%に跳ね上がる。60歳は「病気になるか健康でいられるか」の分かれ目なのである。
ただ、「60代の食生活は難しい」と語るのは、老年専門医で名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科の下方浩史教授だ。
「60代のうちは肥満を防ぐ必要があります。一方で、60代で痩せすぎている人は、将来、低栄養やフレイル(虚弱)のリスクがある。それを防ぐ為に、しっかりと脂質やタンパク質を摂ることが大切になります。同じ60代でも、健康状態によって全く違う目標を設定する必要があるのです」
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source : 週刊文春 2024年10月31日号