競馬の菊花賞があった日、競輪の寬仁親王牌もあり、テレビ東京系でひっそりと地上波放映していた。
競輪の地上波中継番組については当欄で何度もその窮状を訴え続けているが、この寬仁親王牌の中継を見て「地上波中継番組に期待をすることはやめよう」と思うに至った。「なんとかすれば、なんとかなる」と思ってたが、もう諦めた。
競輪の地上波中継番組は日本テレビ系で10年以上続いている坂上忍司会の番組と、テレビ東京系で旅番組や大食い番組との抱き合わせでやってるのと2種類ある。どっちも「競輪バラエティ番組」で、レースじゃなくて「競輪を宣伝する」のが目的で(そりゃまあそうだろう、世間の競輪のイメージがいいとは言えないし)、坂上さんのほうはそれでも「面白い選手を紹介しよう」なのでいいとしても、テレ東のほうは……。
寬仁親王牌を開催している弥彦競輪場のある新潟県弥彦村をオードリーの春日が自転車でめぐり、村の人に「寬仁親王牌ステッカー150枚配布」という、言っちゃ悪いが何も考えてないとしか思えない企画……。そこに唐突にレース生中継が始まり、レースが終わったらただちにステッカー配りに戻る。弥彦村の村歩き番組としてもユルユルだし、レース生中継も「これは大激戦でした!」って実況アナは叫んでるがどこがどう激戦ですごかったのかという解説などはない。番組としてダメだろうこれじゃ。
優勝した古性(こしょう)優作は今いちばん競輪界で強い選手であり、その強さというのが「ただ速いだけではない」「超絶テクニック」「人外の体幹」「コワモテのヒゲ面」「インタビューではぶすっとしてる」「でも笑うと可愛い」「とにかく強い」……という、私は古性じゃない選手を応援してるが古性は認めざるをえないぐらいの、今生きてこの選手を生で見られてよかったというぐらいの選手であり、女子高生が「古性ヤバイ♥」とか言ってキャーキャーするべき男なのだ。こんな男がいる時に、競輪を宣伝しないでどうする。
しかし地上波中継番組にはもうなんの期待もできない。でもテレビでの競輪ピーアールを、私は諦めたわけではない。ある秘策を温めてある。ではどうやって。
朝ドラ『ブギウギ』を思い出してほしい。あの番組によってまったく知名度がなかったOSK日本歌劇団が今やすっかり「あのOSK」で通るではないか。テレビってのはすごいパワーがあるのだ。ならば競輪も朝ドラだ。古性を主役にした朝ドラならどうだ。朝に相応しいスポーツマンドラマ。朝ドラがダメなら大河はどうだ。壮大な闘いドラマ。地区で対抗する競輪は戦国時代劇ぐらいドラマチックだ。笑いたければ笑ってくれ。世の中何があるかわからないので夢は捨てない。
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source : 週刊文春 2024年11月7日号