【前回までのあらすじ】札幌の大学に通うマチは、恋人の浩太の家にあった狩猟雑誌を読んで狩猟に惹かれ、銃砲店を訪れる。店主の堀井から紹介された猟友会会長の新田に誘われて、父と共に新田の事務所を訪れ、狩猟を始めるまでの手続きを教えてもらう。マチが狩猟免許を取ることにしたと浩太に報告すると、彼からは「ごめん」と距離を置くようなLINEが届いた。

 

 浩太と別れた後、マチは目の前のことに没頭した。貯金のためのジムのバイト、就活の下準備。旅行サークルは意地を捨ててさっさと退部した。

 友人のえみりも、もうサークル活動とメンバーにうんざりしていたらしく、LINEで打ち合わせて共に退部した。夏休みはお盆に稚内の実家に帰ることもなく、カフェのバイトのシフトを詰め込んで生活費と学費を稼ぐ予定らしい。マチは狩猟のこと、浩太と別れたことなどをゆっくり報告したかったが、お互い講義の前後に深く話をする時間はなかった。そのまま試験が終わり、夏休みに入った。

 LINEではえみりがしばしば疲れとバイトの愚痴を訴えてくる。マチは主に聞き役に回り、結局、自分の事情については話の合間に短文で告げただけだった。

『別れちゃったかー、メンタル落ちてたらいつでも電話して』

『は? マチがハンターになるから? 初耳なんですけど? え、大丈夫?』

『お父さんの知り合いなんだね。疑うわけじゃないけど、男の人と山に入るんならスマホ手放さないようにね』

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source : 週刊文春 2024年11月14日号