2012年、19年に人気を集めた「私の大往生」の新シリーズ。初回は今年デビュー60周年の加藤登紀子。理想の最期は「竜宮城にとどまって、タイやヒラメの瞬間の中に消えていく」ことという。果たしてその心は?

 今年デビュー60周年の節目を迎えた加藤登紀子(81)。「ひとり寝の子守唄」「知床旅情」「時には昔の話を」など、時代に寄り添う曲で人々の心を動かしてきた。激動の時代を歌と共に歩んできた加藤が今、心に描く「理想の最期」とは――。

 

 今の私には、死ぬまでのプランは何もないんですよ。その時が来たら、「私の人生、ここで終わるのか」と思うだけ。どこまで続いてほしいとか、そういう欲望は一切ない。いつ終わってもいいんです。

 ただ、自分のラストシーンを思い浮かべた時、病院や畳の上にいるのは嫌。私は旅が大好きで、仕事でも世界中を旅してきたから、じっとしていたくないのね。

 憧れるのはロシアの文豪・トルストイの最期。彼は亡くなる前に家出して列車に乗り、途中下車した駅で倒れ、そのまま1週間後に駅長宿舎で亡くなった。すごくかっこいいよね。周りは困るだろうけど(笑)。私も、「いよいよとなったらどっか行っちゃうから、心配しないで」って、冗談交じりにみんなに言ってるの。

 思えば、私の人生そのものが、答えのない旅のようなものでした。自分で選んだわけじゃないのに、時代のうねりの中、深い叫びの聞こえてくるところに運命的に出会ってしまう。

 戦争が終わる1年8カ月前、旧満州のハルビンに生まれた時からその旅は問題を孕んでいた気がします。

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source : 週刊文春 2025年7月24日号