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沖縄・興南“伝説のピッチャー”は母校の事務職員に…元ソフトバンク島袋洋奨27歳が語る「イップスの正体」

イップスの正体 #1

2020/10/03

source : 文藝春秋 digital

genre : ライフ, スポーツ

note

 

「正直なところ、イップスだったのかどうかはわかりません」

――島袋さんは大学時代、イップスになり、それがきっかけでフォームを崩してしまったと言われています。イップスだったかどうかも含め、そのあたり、自分ではどう考えていたのでしょうか。

島袋 僕の場合、正直なところ、イップスだったのかどうかはわかりません。イップスの場合、よくボールを離せなくなる、って聞くんですよ。至近距離を投げられなくなる、とか。でも僕の場合は、力を入れると、ただ高めにすっぽ抜けてしまうだけ。なので、僕の中では、技術がともなっていないだけで、イップスとは違うのかなと思っていました。

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――ただ、明らかに何かがおかしいなというのはあったわけですね。

島袋 それはありました。大学時代はキャッチボールするだけで、こんなに気持ち悪かったっけ……って。3年秋以降は、1イニングすらまともに放れず、先発してもすぐ交代させられていました。5連続四球とかもあったので。マウンドから降ろして欲しくて仕方なかった。正直、もう投げたくない、っていう思いでした。

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――きっかけは3年秋のリーグ戦、青山学院大との試合だったそうですね。

島袋 その試合で、バックネットにボールをぶつけてしまったんです。キャッチャーがぜんぜん捕れないようなボールです。その真っすぐを境に投げ方がわからなくなってしまいました。緩いボールなら何とかなるのですが、力を入れると抜けてしまって。

――滑ったのですか。

島袋 いや、滑ったのなら「わりぃ!」で終わっていたと思います。次、滑らないように投げればいいだけなので。なんでか、わからなかった。それで気にしてしまったんだと思います。そのあと、真っすぐを投げるのが怖くなってしまい、変化球でごまかしていたのですが、キャッチャーがまたストレートを投げて来い、と。首を振っても、しつこく(ストレートのサインを)出されたので、真っすぐを投げたら、またバックネットにぶつけてしまって……。

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――予兆のようなものはあったのですか?

島袋 いえ、その前の週までは普通に投げられていたので、特になかったですね。