「あれだけ実績積んだ子が、もう一回、アマチュア球界にもかかわっていきたいという気持ちを持ったことがすごい。どういう形になるかはわからないけど、よく決断したなと感心しています」

 そう語るのは、イチローの高校時代の恩師で、甲子園春夏5回の出場を果たした愛工大名電高校元監督の中村豪氏(77)だ。

中村豪氏 ©文藝春秋

 米大リーグで活躍したイチロー(46)=米マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター=が、12月13日からプロ野球経験者が学生野球を指導するための資格回復研修会に参加したことが話題になっている。

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プロに入って変化したイチローの意識

 3日間、15時間に及ぶ受講を終えたイチローは、来年2月の日本学生野球協会の審査を受けて資格回復が認められれば、大学や高校などアマチュア選手の指導が可能となる。中村氏は「チームを見渡す」という指導者の資質を、イチローはプロの世界でしっかり身に付けていたと語る。

学生野球資格回復のための研修会に出席したイチロー(12月13日) ©時事通信社

「彼は、プロに入って変わりました。『チームが勝つためにどうするのか』を考えるようになった。私が高校で指導していた頃の彼は、まさに野球の『求道者』でした。『人は人、自分は自分』という感じで、人のことをとやかく言う性格ではなかった。物静かで『自分はヒットを打てばいい』という感じでした。

 だから、彼がプロで次々記録を作って活躍していたときに、『もう、自分が打てばいいというのが“イチロー流”でいいんじゃないのか?』と聞いたんです。すると、『いや、そうじゃなくて、勝たないといけないんです。勝つための一員として、勝利に向かってやっている』と言い出した。自分の成績は別で、勝つことが大事だと言うんです。そこまでしっかりチームのことを考えるようになったのだと驚きました」