殺人的な高校野球での選手起用や試合日程について、ようやく賛否両論になって話が動き始めた感じがしますね。

 私の意見を結論から先に言うと、選手の健康ファーストであるべきで、春夏2回も全国大会があり、地方大会を合わせると年がら年中野球をやっている、日本の高校野球の体質はよろしくないと思っています。いくら何でも壊れるだろ。特に高齢の高校野球ファンが言う「高校生ピッチャーは壊れるまで投げるべき」って、無責任に若者の命を戦地で散らした特攻隊を強いる将校のメンタリティだと思うんですよね。

若いうちから多くの練習をこなすことの弊害は強い

 実際、高校野球で甲子園経験のある選手の6割以上が野球ひじなどの故障を訴えるとされていて、これから野球をやりたいという志ある小学生などの若い選手を抱える全日本軟式野球連盟の調査では、子どもの野球においてひじ痛の再発は9割、また故障を頻発する年齢は11歳から12歳という小学生に集中しとるというデータを出しておるわけですよ。軟式野球だけでなく、リトルリーグなどの硬式野球においても、ハードな練習や登板過多を理由として子どもの健康に問題を抱えたままプレイさせているのは言うまでもありません。

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 高校野球の球数制限に関しては、もちろん「やらないよりは絶対にマシ」という程度であって、やはりまだ骨が成長途上で骨端線が伸びやかな若いうちから多くの練習をこなすことの弊害は強いと思っています。骨が伸びている成長期は、あまり多くの筋トレで強い負荷をかけること自体が故障につながると考えるトレーナーも少なくないのです。

 医師の馬見塚尚孝さんや、プロ野球のチームドクターは投球間隔をきちんと空けることや、投球フォームなどのプレイ動作、コンディションはとても大事だと説明しています。

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フィジカル面で言えば「10年に1人の逸材」が続々と

 一番大きいのは、いま「壊れるまで投げるべき」と主張してやまないオールド高校野球ファンは、まだ高校野球で140km/h台がエースだったころの話をしているからなんですよね。

 あまり良いこととは思いませんが、球速が高校野球でもまだ120km/hから速くても140km/hぐらいなら、連投で痛くても投げられる程度の我慢はできたかもしれません。ですが、トレーニング手法が進化して、20年前とは比べ物にならないぐらい速い球を投げ、また、それをミートできるようになった打者との戦いは、古き良き金田正一400勝投手といまの役割分業プロ野球とを比べるぐらいのレベルの飛躍があります。

 フォームにもよりますが、150km/hを連発できるピッチャーが高校生でこれだけ出現するようになると、どうしても球数制限とそれにともなう複数投手による分業制は必須となりますが、オールド高校野球ファンは「試合では完投して当然」、「酷暑のなか毎日投げて苦しんでいる姿を見て感動する」という図式でもあるのかないのか、本当の意味で選手がつぶれていく姿はもう少し考えてあげたほうが良いと思います。