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大人の自己満足を通り越して故障者量産部活に

 たくさんボールを投げてスタミナをつけフォームを固めたいという指導目標は分かるんですが、せめて遠投組み合わせたり、フォームを録画して投げる腕の張りが起きないようなフォーム修正とかすればいいのにとか思います。でも、監督やコーチが指示しているのは「投げていて疲れるのはスタミナ不足である」として、朝からランニングさせたりしてるんですよね。身体全体で投げるのが良いピッチングのはずなのに、下半身だけ鍛えてどうするんだよ。

 無意味な長距離走を練習メニューに取り入れている学校は驚くほど多いままなのが実情で、私が見ていたのも甲子園出場も繰り返している名門校ばっかりのはずなんですが、どういうことなんでしょう。

 当然、球数制限というのは試合においてだけではなく、練習においても適切な練習量を見極めて試合に出してあげるという野球部全体のマネジメントの問題になっていると思います。というより、週5で100球、200球も投げ込ませる高校野球部が多過ぎるのと、野球の上達には関係のない長時間のランニングを強いたり、超回復をまたずにほぼ毎日筋トレをする野球部は、大人の自己満足を通り越して故障者量産部活になっているとすら思います。

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©iStock.com

 筋トレやるなら翌日は全休にするぐらいでないとダメです。無理に練習メニューを詰め込んで効果のないランニングや筋トレをやるよりは、ラダーやミニハードルをやったり、充分に休養をしてたんぱく質を取るほうが有効であることは言うまでもありません。

 それでなくとも、日本の高校、特に地方公立は視察に行ってこちらがドン引きするほど理不尽な校則で生徒たちを学校が縛り上げ、髪型から制服の着こなしまで細かく指導しており、そればかりか、そういうビシッとしている生徒たちがいることを「うちの学校は校風が厳しいから、よく躾けられていて、風紀が乱れない」と校長自らが豪語することすらあります。馬鹿なんだと思いますね。その校則には具体的にどのような根拠や意味があるのですかと質問すると、ふんぞり返って「うちの高校は地域の要請もあって規律を守れる優れた集団にしています」と回答されたりして、価値観の違いを肌で感じるのです。

しごかれて我慢することでレギュラーが得られる不思議文化

 さらには、外部から視察に入っているのにコーチが選手をグーで殴っているチームとか普通にあります。見ているこっちがびっくりです。いい歳して体罰とかアカンと思うんですけど、これがけっこう普遍的にあります。

 つぶさに見ていると、選手の側もチーム・組織のコミュニケーションが暴力で成立している場合もあって、つまり殴られないと「このコーチの言うことを守らなければいけない」という認識になれなかったり、先輩から理不尽なメニューを押し付けられてしごかれて我慢することでレギュラーが得られるというような不思議な文化が残っている野球部がまだまだあるんだということが分かります。

 これって、そのままブラック企業に当てはまるような、古き良き駄目な体育会系文化をそのまま引きずっているようにすら感じられて、「こんなに若いのにどうしてこんなことに」と悲しい気分になります。

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