「文藝春秋」7月号の特選記事を公開します。(初公開:2020年6月10日)
「執行猶予が明けるのが怖いんです……」
2020年の春、コロナ・ウィルスの猛威が日本にも影を落としはじめていた頃、清原和博氏は世の中とはまったく別の理由でふさぎ込んでいた。
「もうちょっと執行猶予伸ばしてくれへんかなって……。なんなら一生執行猶予でもええなって、そう思うんです……」
2016年、覚せい剤取締法違反の罪によって有罪判決を下された。
『懲役2年6ヶ月、執行猶予4年』
それがまもなく満了しようとしている。
6月15日午前0時に執行猶予が明ける
2020年6月15日、午前0時0分。
逮捕されてからずっと、その日をめざして生きてきたはずだった。それなのに、いざその瞬間を目の前にした清原氏は、巨体を縮めて怯えてしまっているのだ。
「最近は会う人、会う人に『もうすぐ執行猶予が明けるね』と言われるんですけど、それが嫌で嫌で……。怖いんです」
誰かが言う。
『更生してもらいたい』
『復活を願っています』
何をもって更生なのか。復活なのか。清原氏にはそれがわからない。
「本質の部分は変わらないと思うんで……」
「執行猶予が明けたらいきなり聖人君子にならないといけないプレッシャーのようなものです。いきなりぼくの中で何かが変わるわけではないですから……。本来、ぼくの中に流れている血というのは、やっぱり本質の部分は変わらないと思うんで……」
相変わらず薬物への欲求は消えていないという。いつも耳鳴りがしていて、手の震えもおさまらないのだという。
「夜はほとんど毎晩、悪夢を見ますし、朝は起き上がることができない日もあります。世の中が慌ただしく動いているのに、自分だけ取り残されているような気がして、これまで部屋のカーテンはいつも締め切っていました」